バリカンの話
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バリカンの話
これからの話は私の独断と偏見に満ちた物です。しかし、多くの方はどことなく理解できると思います。
世界ではバリカンという言い方はされていません。正式名称は英語でHair clipper(ヘアークリッパー)と言います。バリカンとの名称は最初に輸入された手バリカンのメーカーがフランスのBarriquand et Marre(バリカン・エ・マール製作所)製だったことにちなむと言われています。
韓国でも日本統治時代の名残で「バリカン」と呼ばれています。
まるで、トヨタ車を最初に輸入した後進国が自動車のことを「トヨタ」と言っているような物です。笑ってしまいますね。
日本でバリカンと言えば清水電気製のスピーディックに代表される座金タイプが最も普及しています。このタイプの替え刃は分解でき昔から研ぎのできる替え刃です。80%のシェアを誇り、理美容やトリマーの業界では誰でも一度は手にしていると思います。
最近は、オースターやウオール、モジャー、ロビン、パナソニック等のクリッパーが少しずつですが併用して使用される方が増えています。このタイプは日本では研ぎに出すケースが少なく、使い捨てで使用しているようです。
人間の理美容師さんは最近は殆どバリカンの使用が無くなってきています。刈り上げもハサミで仕上げられるようです。学生の丸刈りなどは家庭用のバリカンが優れものが多く出回り、床屋さんでする機会が無くなりつつあります。
犬猫の柔らかい毛から剛毛まで色々な毛質に対応しなくてはいけないトリマーさんはバリカンを使用する機会が多いために、替え刃の切れ味には気を使います。
ハサミ・バリカンの研ぎ師さんもバリカンの研ぎはあまり好まないように感じます。ハサミと比べると人間の毛髪では問題なくても色々な動物の毛髪を切れる様にすることは難しいようです。
実際、人間の髪を切っても何の問題も、引っかかりも全くないと思うバリカンで猫の毛を切ると一発で噛んでしまいます。(スピーディックタイプに限る)1度噛むと2度と切れない!!不便な物です。
スピーディック以外の新しいクリッパーは噛んだと思っても全く切れない訳ではありません。すぐにまた普通に切れます。本当に刃が摩耗して初めて切れなくなります。
刃の作りの問題だと思いますが、クリッパーのその点は優れていると思います。
しかし、日本ではスピーディックタイプが80%のシェアを持っています。これは、トリマーさんの殆どの美容学校で使用されているためだと思います。
最近は、少しずつクリッパーが普及しているようです。
最近知った話ですが、スピーディックの清水電気さんは新品のバリカンに普通に付いていた保証を全く止めたとのことです。買ってからすぐの初期不良でも1ヶ月後であっても保証されないようです。
試しに、問屋さんに聞いてみた方が良いと思いますよ。
ハサミの研ぎよりスピーディックタイプのバリカンの研ぎの方が難しいみたいです。動物用のバリカンの研ぎをしない研ぎ屋さんは結構多く見えます。
ネットで検索しても、研ぎ屋さんの話からも、スピーディックの替え刃では締め切ってから半回転の戻しをされて見えるところが殆どです。新品のバリカンの替え刃は1回転半です。
バリカン君Sを使用時は1回転戻しです。(これは、スプリングが縮んでいたり、研ぎ屋さんで多く削った替え刃であったりするために絶対に切れる戻し方のため)
半回転戻しは研ぎの不正確さをバネの力でカバーしようとしていると思います。正確な研ぎができれば1回転半の戻しで切れるはずです。
正確に研ぐのは、ハサミの研ぎの名人でもバリカンの替え刃は非常に困難なことが想像されます。使い捨ての替え刃では研ぐという発想もありません。
バリカンの替え刃をメーカーに研ぎに出すのが一番仕上げはよいのですが、研ぎから戻ってくるのが2~3ヶ月もかかります。とても我慢の限界を超えています。
そんな訳で、トリマーさんはバリカンが完全に止まるまで使い続けます。切れない刃で切ろうとすると、皮膚に押しつけていきます。
刃の角度が本来水平であるべき物が、皮膚に突き立てるような角度になり、皮膚が盛り上がるように使う人までいます。
指先の毛を刈るのにも、まるでほじるように爪の間をこすっています。非常に危険です。
ペットカットで1センチ残しで3ミリの替え刃を使い順刈りして充分毛が残ることは新品ではあり得ません。新品で同じ事をすると6ミリの裸になってしまいます。
いつも同じ仕事をするためにはいつも同じ切れ味が必用です。今すぐにバリカン君Sを使ってみて下さい。
日本料理の板前さんに代表されるように毎日仕事が終わると自分で包丁を研ぎます。大工さんも切れ味が悪いと思ったらノミも、カンナも必ず自分で研ぎます。
トリマーさんも、自分の道具を自分で手入れすることに挑戦してみて下さい。